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犬の認知症のサイン チェックリストと暮らしの工夫

2026年10月12日

最近、愛犬が部屋の隅で立ち止まる、呼んでも反応が遅い、夜に落ち着かない——それは年齢による変化かもしれませんし、「認知症(認知機能不全症候群)」のサインかもしれません。この記事では、獣医療で使われる6つの観点にそったチェックリスト、年齢とともに増える傾向を示す研究データ、ほかの病気との見分けが必要な理由、受診の伝え方、毎日の暮らしでできる工夫までをやさしくまとめました。

「部屋の隅で、壁を見つめたまま立ち止まっていることがある」「名前を呼んでも、前ほどすぐに振り向かない」「夜中にうろうろして、なかなか寝てくれない」——年齢を重ねた愛犬のこうした様子に、「もしかして認知症?」と胸がざわついた経験はありませんか。

犬にも、人の認知症に似た状態があることがわかっています。獣医療では「認知機能不全症候群(にんちきのうふぜんしょうこうぐん)」と呼ばれ、英語の頭文字から「CDS」や「CCD」と書かれることもあります。

結論からお伝えすると、大切なのは次の3つです。①「年のせい」と決めつけず、変化を具体的にメモする。②ほかの病気が隠れていないか、動物病院で確かめてもらう。③うちの子が安心して過ごせる環境と、毎日の小さな楽しみを用意する。

この記事では、獣医療で使われている6つの観点にそったチェックリストを中心に、年齢との関係、受診のときの伝え方、暮らしの中でできる工夫を順にご紹介します。

犬の認知症(認知機能不全症候群)ってどんな状態?

窓辺のベッドで穏やかに休むシニアのトイ・プードル

「年をとったから」だけでは説明しきれない変化

犬も年齢を重ねると、寝ている時間が長くなったり、動きがゆっくりになったりします。これは自然な変化です。

一方、認知機能不全症候群は、脳の働きの変化によって、記憶や学習、周りの状況の理解、睡眠のリズムなどに影響が出てくる状態とされています。慣れているはずの家の中で迷う、覚えていたトイレの場所を失敗する、家族への反応が変わる——といった、ふだんの行動の変化として現れるのが特徴です。

ただし、どこからが「自然な老化」で、どこからが「認知機能不全症候群」なのか、はっきりした線を飼い主さんが引くのは難しいものです。だからこそ、気になる変化に早めに気づき、専門家と一緒に見ていくことが大切になります。

年齢とともに増えていく傾向がある

海外の研究では、年齢が上がるほど、こうしたサインが見られる犬の割合が増えることが報告されています。

年齢報告されている割合
11〜12歳約28%の犬に、少なくとも1つの領域で変化が見られた
15〜16歳約68%の犬に、少なくとも1つの領域で変化が見られた

(Neilson ら, 2001年。アメリカの飼い主アンケートにもとづく研究)

数字だけを見ると驚くかもしれませんが、これは「変化が1つでも見られた犬」の割合で、すべてが重い状態という意味ではありません。研究によって調べ方や数字には幅があります。それでも、シニア期に入ったら、誰にでも起こりうる身近な変化として知っておくことには意味があります。

なお、海外の動物病院向け資料では、犬の場合7歳ごろから年に1回、行動の変化を確認していくことがすすめられています。大型犬は小型犬より早く年をとる傾向があるので、体の大きさも目安になります。

認知症のサイン チェックリスト

床に座ってノートにメモをとる飼い主と、そばで寝そべるシニアのミックス犬

獣医療では、認知機能不全症候群のサインを、6つの観点の頭文字をとって「DISHAA(ディシャー)」として整理することがあります。ここでは、その観点にそって、ご家庭で気づきやすい様子をまとめました。

うちの子に当てはまるものがないか、ゆっくり思い浮かべてみてください。

D:見当識(けんとうしき)の変化 ― 場所や状況がわかりにくくなる

「見当識」とは、少し難しい言葉ですが、簡単にいうと「今どこにいて、何が起きているかを理解する力」のことです。

  • 家の中や、よく行く散歩道で迷ったようになる
  • 部屋の隅や家具のすき間に入りこみ、後ろに下がれなくなる
  • 壁や何もない空間を、じっと見つめていることがある
  • ドアの蝶番(ちょうつがい)側など、開かない側で待っている
  • 家族や、よく知っている人を見ても、わからないような様子がある
  • ごはんや水の場所がわからなくなる

I:関わり方(社会的な交流)の変化

  • 以前より、べったり甘えて離れなくなった
  • 逆に、なでられるのを避ける、ひとりでいたがるようになった
  • 同居の犬や猫との関係が変わった
  • 帰宅しても、出迎えなくなった

S:睡眠と目覚めのリズムの変化

足元灯がともる夜の廊下を、落ち着いて歩くシニアのコーギー
  • 昼間に寝ている時間が、明らかに長くなった
  • 夜中に起きて、うろうろ歩き回る
  • 夜に鳴く、吠えることが増えた

H:トイレや、覚えていたことの変化

  • これまでできていた場所で、トイレを失敗するようになった
  • 外でトイレをする子が、散歩から帰ってすぐ室内でしてしまう
  • 「おすわり」「まて」など、覚えていた合図への反応が鈍くなった
  • 新しい習慣やルールに、なかなか慣れなくなった

A:活動量の変化

  • おもちゃや遊びへの興味が薄れた
  • 目的がないように、同じところをぐるぐる歩き続ける
  • 体のお手入れ(毛づくろいなど)をあまりしなくなった

A:不安の変化

  • 留守番のときや、家族の姿が見えないときに、強く不安がるようになった
  • 雷や物音など、以前は平気だった音をこわがるようになった
  • 新しい場所や人に、落ち着かない様子を見せる

ひとつの観点だけでなく、複数の観点で変化が見られる場合は、単なる年齢の変化以上のものが関わっている可能性があるとされています。一方で、当てはまる項目があったからといって、それだけで「認知症」と決まるわけではありません。このチェックリストは診断のためのものではなく、動物病院で相談するときの手がかりとして使ってください。

(夜間の落ち着かなさについては、別記事「犬が急に落ち着きがない・夜にウロウロ」「夜中に何度も起きる愛犬」でもくわしくご紹介しています)

「年のせい」と決めつけず、動物病院へ

動物病院で獣医師の診察を受けるシニアのビーグルと、そばで見守る飼い主

ほかの病気でも、似た変化が起こることがある

認知機能不全症候群のサインに見える行動の中には、別の病気や体の不調が原因になっているものも少なくありません。たとえば、次のようなケースです。

  • 足腰に痛みがあって動きたがらない → 出迎えなくなった、遊ばなくなったように見える
  • 目や耳が見えにくく・聞こえにくくなっている → 呼んでも反応しない、物にぶつかる
  • 内臓の病気で水を多く飲み、おしっこの量が増えている → トイレの失敗が増える
  • 体のどこかに不快感がある → 夜に落ち着かない、鳴く

そのため、動物病院では、行動の変化を聞きとったうえで、ほかの病気が隠れていないかを確認しながら判断していきます。必要に応じて血液検査などが行われることもあります。

自己判断で「認知症だから仕方ない」としてしまうと、楽にしてあげられたはずの不調を見逃してしまうかもしれません。気になる変化があれば、まずは相談してみる——それが、うちの子にとってもいちばんの近道です。

受診のときに伝えたいこと

診察室では緊張して、うまく説明できないこともありますよね。次のようなことをメモしておくと、伝えやすくなります。

  • いつごろから、どんな変化があるか(チェックリストで当てはまった項目)
  • その様子が、1日のうちのいつ、どのくらいの頻度で起こるか
  • 食欲・飲水量・トイレの回数や量に変わりはないか
  • 最近の生活の変化(引っ越し、家族構成の変化、模様替えなど)

さらに、夜にうろうろする様子や、隅で立ち止まる様子をスマートフォンで動画に撮っておくと、診察室では見せない行動も獣医師に伝わります。

治療や相談の選択肢について

現時点で、認知機能不全症候群を根本から治す方法は確立されていません。そのうえで、動物病院では、症状の程度やその子の体の状態に合わせて、お薬や食事、生活環境の見直しなどを組み合わせた対応が検討されます。

サプリメントや食事を変える場合も、ほかの持病や飲んでいるお薬との関係があるため、始める前にかかりつけの獣医師に相談することが大切です。行動面の悩みが大きい場合は、行動診療を専門にする獣医師に相談するという方法もあります。

毎日の暮らしでできる工夫

ここからは、うちの子が安心して過ごしやすくなるための、暮らしの工夫をご紹介します。どれも「これをすれば治る」というものではありませんが、うちの子と家族の毎日を少しでも過ごしやすくするための工夫です。

安全に動ける環境を整える

やわらかいマットを敷いた円形サークルの中でくつろぐシニアのミニチュア・ダックスフンド
  • 隅やすき間をふさぐ:家具と壁のすき間など、入りこんで出られなくなりやすい場所は、物を置いてふさいでおきます
  • 円形サークルを使う:ぐるぐる歩き続ける子には、角のない円形のサークルが向いています。角で行き止まらず、ぶつかってもけがをしにくくなります
  • 床の滑りを減らす:マットやタイルカーペットを敷くと、足を取られにくくなります
  • 段差や階段を区切る:転落を防ぐため、ゲートを使います
  • 夜も足元を明るく:足元灯があると、暗い中での移動が安心です

(床や段差の工夫については、別記事「シニア犬の住環境づくり 滑らない床と段差の工夫」でくわしくご紹介しています)

生活のリズムを整える

  • ごはん・散歩・寝る時間を、できるだけ毎日同じにする
  • 昼間は、日の光を浴びる時間をつくる。歩くのがつらい子は、カートや抱っこで外の空気に触れるだけでも
  • 夜は部屋を暗く静かにして、寝る場所を決めておく

昼と夜のメリハリがつくと、夜に落ち着かない様子がやわらぐこともあります。

毎日に「小さな楽しみ」を

ノーズワークマットでおやつを探すシニアのゴールデン・レトリーバーと、見守る飼い主
  • おやつを部屋のあちこちに隠して、においで探す遊び
  • 知育トイ(おやつを入れて転がすと出てくるおもちゃなど)
  • 覚えている合図をゆっくり練習して、できたらたっぷりほめる
  • 散歩のコースを少し変えて、新しいにおいに出会う

難しすぎると、かえって不安やストレスになることもあります。うちの子が楽しそうにしているかどうかを目安に、無理のない範囲で取り入れてみてください。

トイレの失敗には、叱らずに

トイレを失敗してしまったとき、叱っても、犬にはなぜ叱られたのかがわかりにくくなっています。叱られることで不安が強まることもあります。

  • トイレに連れ出す回数を増やす
  • 室内のトイレスペースを、寝床の近くにも用意する
  • ペットシーツを広めに敷く
  • 必要に応じて、おむつやマナーベルトを使う

「できなくなった」ことより、「できる形に整えてあげる」ことを考えていけるといいですね。

家族だけで抱えこまないで

夜中に何度も起こされたり、トイレの片づけが続いたりすると、飼い主さんの心と体にも負担がかかります。うちの子を大切に思うほど、「私ががんばらなきゃ」と抱えこんでしまいがちです。

  • 家族で役割を分担する
  • かかりつけの獣医師に、夜の様子や困りごとを率直に相談する
  • 老犬ホームやペットシッター、日中の預かりサービスなどを、必要に応じて検討する

飼い主さんが少しでも休めることは、結果的に、うちの子の安心にもつながります。頼れるものには、遠慮なく頼ってくださいね。

うちの子の「今」に寄り添うために

夕方の光の中、ひざの上でくつろぐシニアのキャバリアと飼い主

ここまで、犬の認知症(認知機能不全症候群)がどんな状態なのか、6つの観点にそったチェックリスト、ほかの病気との見分けが必要な理由、受診のときの伝え方、そして暮らしの工夫をご紹介してきました。

あらためて整理すると、大切なのは、変化に気づいたら具体的にメモをすること、「年のせい」と決めつけずに動物病院に相談すること、そして安心できる環境と小さな楽しみを用意することの3つです。

年齢を重ねて、できることが少しずつ変わっていっても、うちの子が家族を大切に思う気持ちは変わりません。今のうちの子に合わせたペースで、一緒に過ごす時間をゆっくり楽しんでいけますように。

私たちM&N’s(エムアンドエヌズ)は、「キミを想う、キミに寄り添う」ナチュラルウェルネスプロダクトブランドとして、皆様の健やかな暮らしを応援しています。

投稿者

  • M&N'sCBDのスタッフである商品開発米山と、マーケティング担当鈴木でコラムを更新しています。商品のこと、CBDのこと、よくあるお客様の声などについて詳しくご紹介します。