大麻取締法の改正決定!CBDはどうなる?

大麻取締法の改正決定!CBDはどうなる?

2023年秋の臨時国会にて大麻取締法の改正が決定しました。改正法案の内容とこれからのCBD市場がどうなっていくのかについて紹介していきます。

75年ぶり!大麻取締法が改正される?

 2023年12月6日、衆議院に続いて参議院でも大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法の一部の改正案が賛成多数により可決され、大麻取締法の改正が成立することが決まりました。第二次世界大戦後にGHQが主導して制定された大麻取締法ですが、改正されるのは実に75年ぶりのことです。

「医療大麻解禁!」や「大麻の使用罪が創設されて厳罰化される!」等、早くもネットやSNS上では様々な情報が飛び交っています。CBDを取り扱う事業者や消費者にとっては具体的にどのような影響があるのかについて、本記事で紹介していきます。

部位規制から成分規制に

日本での大麻規制の歴史

 1948年に制定された大麻取締法では、大麻草の部位によって規制される部位、規制の対象外とする部位が区分されています。いわゆる「部位規制」は日本独自の規制ルールであり、これには日本の文化や歴史が関わっています。

 日本では古来から大麻は植物の中でも「最も位が高いもの」として位置づけられ、神札やしめ縄、皇族の衣服などにも使用されてきました。「麻(あさ)」という植物に、尊敬や経緯の意味が付与されて「大麻(たいま・おおぬさ)」と呼ばれるようになりました。

 日本文化や伝統に深く根差した大麻を規制するのが困難であったために、繊維に利用する「茎」と栽培に不可欠な「種」を規制の対象外にしようという方針になったわけです。

「THC」や「CBD」の発見

 1960年に入ってから、大麻草に含まれるTHC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール)やCBD(カンナビジオール)など成分が次々に単離・発見され、大麻がもたらす「ハイ」になる効果はTHCによるものだということが解明されていきました。またこれらの「カンナビノイド類」の作用研究から、人をはじめとした哺乳類には「エンドカンナビノイドシステム」という身体の調節機構が備わっていること、またTHCやCBDがそれらの調節機構やいくつかの受容体に作用して多様な薬理活性をもたらすことが明らかになっていきました。

「成分規制」がグローバル・スタンダード

 特定の成分ごとの有用性やリスクなどの研究が進んだことにより、「植物としての大麻」を一括りに危険視するのではなく、「特定の成分」に対して規制ルールを見直すべきだという考えが世界で広がっています。北米では0.3%、ヨーロッパでは0.2%未満のTHC濃度であれば、大麻由来製品を規制しないというのがスタンダードになりました。

 日本では衣類用の繊維か神事等に使用する目的でしか、大麻栽培の許可が下りた実績がありませんから、CBDの100%を海外から輸入する必要があります。輸入に際しては、下図の3つの書類等を揃えて、厚生労働省の麻薬取締部に事前確認を行われければなりませんが、実際に特定のCBD製品が大麻に該当するかどうかは、基本的にTHCが検出されるかによって判断されています。

https://www.ncd.mhlw.go.jp/dl_data/cbd/guidecbd.pdf

旧来の部位による規制というルールがある一方、実態としての規制は成分を元に行っているという乖離も生じており、「成分規制」への移行することが、今回の改正点の一つです。

大麻取締法から麻薬取締法に

 なお今回法改正により、「大麻」を取締る法律が変更されます。これまでは大麻取締法によって大麻ならびに大麻製品が規制をされてきましたが、今後はTHCや大麻は「麻薬及び向精神薬取締法(以下、麻向法)」の規制対象に組み込まれることになり、次のような変化が生じます。

●他の薬物同様に、麻向法では「使用罪」が施用されることになり、懲役や罰金刑なども大麻取締法に比べて重いものとなる(厳罰化)

●医療での大麻の施用の一切を大麻取締法では制限してきたが、麻向法では厚労省または都道府県からの許可が得られれば、研究や医療への使用が可能になる

https://www.mhlw.go.jp/content/001159661.pdf

 THCなどの精神活性をもたらす成分に対してはより厳しい法律になりますが、一方でCBDのような規制対象外の成分にとっては、合法的であるという位置づけがより明確になるといえます。

医療大麻解禁とは?

難治性てんかん用のCBD医薬品が利用可能に

海外の一部の国では、医療大麻として、乾燥させて大麻草の花穂(いわゆるバッズ)を使用するケースがありますが、日本での「医療大麻解禁」はこれとは大きく異なります。基本的には「CBD」を主成分とした「大麻由来医薬品」の使用がまずはスタートしていきます。

現在までにアメリカFDAは既に4つの医薬品を承認しています。

1)エピディオレックス:
レノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群という2つの希少で重篤なてんかんの治療薬

2&3)マリノール、シンドロス(THCを含む):
がんの化学療法にともなう吐き気や嘔吐の治療、HIV/AIDS患者の食欲不振と体重減少の治療

4)セサメット(THCを含む):
がんの化学療法にともなう吐き気や嘔吐の治療

 このうち唯一THCを含まず、日本でも使用の目途が立ちつつあるのはエピディオレックスのみです。エピディオレックスは、2022年から聖マリアンナ医科大学病院など複数の医療機関での治験が進められています。

がん治療などの緩和ケアにも期待

 THC含有医薬品の使用についてはまだハードルが高くなることが予想され、エピディオレックスのようなスピード感は期待できないと考えられます。

 しかしながら、これまでは大麻取締法によって医療目的での施用の一切が認められず、研究や創薬なども事実上は不可能に近い規制でした。ただ、今回の法改正で麻向法による規制に切り替わることで、「医療分野での幅広い利用に向けた研究や検討ができる土台が作られた」ことは非常にポジティブな変化です。

 内閣府は2022年の「骨太の方針」の中でも、がんの緩和ケアの文脈で大麻法制度を見直すことを既に言及していましたし、「大麻草の栽培の規制に関する法律」でも「第二種大麻草採取栽培者」という区分が設けられました。これは「厚生労働大臣の免許を受けて、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律で、医薬品の原料を採取する目的で、大麻草を栽培する者」とされています。

”CBDが利用できなくなる”は本当か?

 CBD医薬品であるエピディオレックスが承認されることで、CBDが医薬品リストに収載され、健康食品や化粧品等に利用できなくなるのでは?という憶測が飛び交っているようです。「食薬区分における成分本質(原材料)リスト(以下、医薬品リスト)」という厚労省が管理するルールがあるためです。

 食薬区分では、次の2つに各成分が分類されます。

1)「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」=医薬品リスト
2)「医薬品的効能効果を標榜しない限り、医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト=非医薬品リスト

 当社は、CBDが「非医薬品リスト」に分類され、今後は医薬品と食品・化粧品の双方で使用ができる扱いになっていくと考えています。以下の理由からです。

①そもそも医薬品リストに区分される成分は、医薬品としての管理の必要性、すなわち副作用があるために用法や用量などの処方管理の必要性があるためです。CBDの安全性や副作用がきわめて限定的であることはWHOも調査レポートを公表しており、またCBDには「致死量が無い」点でみれば、ビタミンCよりも安全であるともいえる。

②厚生労働省が、今回の法改正のをめぐる議論の中で、「これまでもCBDが食品や化粧品等に広く利用されている事実を確認しており、また法改正の方針として、医療・産業用途での幅広い活用を推進していく」旨が度々言及されている。

③今回の法改正にあたり、厚労省は欧米などの大麻規制の諸外国のルールを調査し、参考にしていますが、欧米でもCBDの医薬品利用にあたって、食品等への規制を行うケースはありませんでした。※例外としてカナダでは、子供による大麻製品の誤食が問題視され、菓子類などの食品への使用を部分的に制限していますが、これは対象年齢の制限や保管方法の明示など、別のルール整備によって解決すべき懸念です。

 よって、CBDが医薬品以外では利用できなくなるという見方は、適切に情報を理解できていないがゆえの誤解であると考えます。

今後のCBD市場はどうなる?

改正法案はいつから? 

 改正法案の施行時期については、厚労省や政府は現時点で明示していません。ただし、改正法案は公布から1年以内には施行されますので、2024年中であることは間違いありません。

CBD市場は伸びるのか?

 現在の大麻取締法では、部位規制などの曖昧なルールやTHCの管理基準など未整備の点が多々あり、万が一のリスクに対する懸念から決済サービスや広告サービスなど、制限が多くかかることが少なくありませんでした。成分規制への移行やTHCの検査基準のガイドラインが明確になることで、よりCBD製品の合法的な位置づけが分かりやすくなり、様々な制限も緩和されていくと考えられます。つまり、大麻取締法の改正によって、医療分野・産業分野の双方でCBD製品が広く活用されていくための土台が整備されたとも言えます。
 
 昨今日本では慢性的なストレスによる不眠や精神疾患、自殺なども社会問題となり、サウナやコーヒーブームもあるように自律神経の不調に対するビジネスは根強く伸びる傾向があります。
また高齢化によって慢性的な痛みや認知機能の低下など、QOLに関わるテーマに対してもCBDの有効性は世界的にも注目されています。日本社会が抱える様々な不調や疾患の解決策になりうるCBDは、製薬会社だけでなく、食品・化粧品メーカーの多くが検討、市場に参入していくのではないでしょうか。

Bicle(ビクル)では、

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