さっきまで甘えていた愛犬が、急に怒って噛みついた——そんなときに耳にする「激怒症候群(レイジ・シンドローム)」。どんな状態なのか、多いといわれる犬種、実はほかの原因であることが多い理由、怒り出したときの対処法と記録のとり方を、飼い主さん向けにやさしく解説します。
さっきまで膝の上で甘えていた愛犬が、撫でようとした手に突然噛みついた。目つきが変わって、名前を呼んでも届かない。でも数分後には、何事もなかったようにしっぽを振っている——。
こんな経験をして調べていると、「激怒症候群(レイジ・シンドローム)」という言葉に出会うことがあります。
先にお伝えしておきたいのは、激怒症候群はとてもまれな状態で、「突然怒る」の多くは別の理由で説明できるということです。この記事では、激怒症候群とはどんな状態なのか、多いといわれる犬種、ほかに考えられる原因、そして怒り出したときに飼い主さんができることを、順番にやさしくお話しします。
目次

激怒症候群は、はっきりしたきっかけがないのに、犬が突然はげしく怒り出す状態を指す呼び名です。報告されている様子には、次のような流れがあります。
普段はおだやかで、家族にもよく懐いている子に起きることが多いため、飼い主さんにとってはショックが大きいものです。
なぜ起きるのかは、まだはっきりわかっていません。脳の電気的な乱れ(てんかんに近い状態)が関係している可能性や、遺伝の影響が指摘されていますが、確かなことはいえない段階です。
また、獣医学の専門家のあいだでも、「激怒症候群」というひとくくりの呼び名を使うこと自体に慎重な意見があります。名前にとらわれすぎず、「実際にどんな様子だったか」を見ていくことが大切です。

激怒症候群は、特定の犬種で話題になることが多い状態です。よく名前が挙がるのは、次のような犬種です。
| 犬種 | よくいわれること |
|---|---|
| イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル | 「スプリンガー・レイジ」という呼び名が生まれたといわれる犬種 |
| コッカー・スパニエル(イングリッシュ/アメリカン) | 激怒症候群の話題でもっとも名前が挙がりやすい犬種のひとつ。とくに赤・ゴールド系の毛色と結びつけて語られることがある |
| バーニーズ・マウンテン・ドッグ | 報告がある犬種として挙げられることがある |
| セント・バーナード | 同上 |
| ドーベルマン | 同上 |
| ジャーマン・シェパード | 同上 |
| ゴールデン・レトリーバー | 同上 |
ただし、これらの犬種でも実際に当てはまる子はごくわずかとされています。また、上に挙げた犬種以外でも起こりうるもので、犬種や毛色だけで「うちの子は危ない」と判断することはできません。性格や行動には、一頭一頭の個性や、育ってきた環境も大きくかかわっています。
「急に怒るようになった」というとき、実際には激怒症候群ではなく、次のような理由が隠れていることがよくあります。

首や腰、耳など、特定の場所をさわったときだけ怒る場合は、痛みや体の不調が背景にあるかもしれません。シニア期に入って、少しずつ怒りっぽくなってきた場合も、まずは体のチェックをおすすめします。
掃除機の音、帽子をかぶった人、寝ているところを急にさわられた——など、怖さや驚きから身を守ろうとして怒ることがあります。この場合は、怒る相手や場面がある程度決まっていることが多いです。
ごはんのお皿やお気に入りのおもちゃ、寝床の近くでだけ怒る場合は、「取られたくない」という気持ちからの行動かもしれません。
激怒症候群として報告されている例では、①きっかけが思い当たらない、②怒ったあとにぼんやり・ぐったりする、という2つが特徴とされています。
反対に、「さわった場所」「音」「近くにあった物」など、毎回に共通点があるなら、ほかの原因を考える手がかりになります。どちらにしても、自己判断せず、動物病院で相談することが大切です。

怒っているあいだは、声をかけたり、目を合わせたり、手を出したりしないようにしましょう。

受診したときにいちばん役立つのは、飼い主さんの記録です。スマートフォンのメモで十分なので、次の3つだけでも残しておきましょう。
安全に撮れる場合は、動画も残しておくと、獣医師に様子が伝わりやすくなります。
まずは、かかりつけの動物病院で、痛みや病気が隠れていないかを確認してもらいましょう。必要に応じて、犬の行動の相談を専門に受けている「行動診療」の獣医師を紹介してもらえることもあります。

原因がはっきりするまでのあいだも、家庭でできる工夫があります。
ペットのリラックス習慣として、CBD(麻由来の成分のひとつ)に関心を持つ飼い主さんも増えています。ただ、犬の行動とCBDについての研究はまだ少なく、激怒症候群を対象にした研究は確認できていません。
取り入れる場合は、次の点を守りましょう。
愛犬が急に怒ると、悲しくなったり、怖くなったりするのは自然なことです。でも、その子にも何か理由があるのかもしれません。あわてずに記録を残し、専門家と一緒に原因を探していきましょう。あなたと愛犬が、また安心して寄り添える毎日へ。私たちも応援しています。
