萎縮性膣炎になってしまった。膣炎は治ったが何をどうやっても不快感が治らないのですがどうしたら良いでしょうか?

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「萎縮性膣炎と診断されて治療を受けたのですが、炎症自体は治まったのに、ヒリヒリ感やムズムズがどうしても残ってしまって……。何を試しても良くならず、どうしたらいいか分かりません」
――そんな切実なお悩みが、読者の方から寄せられました。
実は、このような声は更年期以降の女性からよく聞かれます。今回は、「治療後にも残るデリケートゾーンの不快感」について、医学的な視点から原因と対処法をやさしく解説し、少しでも快適に過ごせるヒントをお届けします。
萎縮性膣炎(いしゅくせいちつえん)は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少することで、膣や外陰部の粘膜が薄く・乾燥し・敏感になることによって起こる慢性的な状態です。更年期や閉経後の女性に多く見られ、以下のような症状を引き起こします。
今回ご相談いただいた方も、こうした症状の中の「炎症」は治療でおさまったものの、膣や外陰部の萎縮(うすくなった状態)自体はまだ残っていることが、不快感の原因となっている可能性があります。
皮膚や粘膜は、炎症が一度治まってもすぐに元通りの状態に戻るわけではありません。特に、エストロゲンが減少している状態では、粘膜の再生力や潤いを保つ力が落ちているため、ヒリヒリ感や乾燥による違和感が長引くことがあります。
また、長期間にわたって不快感が続いていたことで、神経が敏感になってしまい、通常なら感じない刺激にも過剰に反応してしまう「神経過敏」のような状態に陥っているケースもあります。
さらに、乾燥や粘膜の萎縮が続くことで、膣や外陰部のバリア機能が低下し、外部からの刺激や雑菌に対して敏感になり、炎症が再発・悪化しやすくなることもあります。
つまり「もう治ったから大丈夫」と油断してしまうと、再び萎縮性膣炎や膣カンジダ、細菌性膣炎などを繰り返すリスクが高くなるのです。
だからこそ、治療後のケアこそがとても大切。違和感がなくなったあとも、予防的な保湿や生活習慣の見直しを継続することで、トラブルのない状態を維持しやすくなります。
顔や手と同じように、デリケートゾーンにも「保湿ケア」がとても大切です。
外陰部や膣まわりは皮膚が薄く、乾燥しやすい部位。特に更年期以降は、入浴や排尿の後、また下着との摩擦などで潤いが失われがちです。
今は、デリケートゾーン専用のソープや保湿剤が多数市販されており、肌にやさしくケアができるアイテムを選ぶことができます。
以下のようなタイプがありますので、ご自身の好みやライフスタイルに合わせて選んでみてくださいね。
低刺激で無香料、そしてデリケートゾーン専用に設計された製品を選ぶことで、肌への負担を減らしながら心地よいケアが可能です。
毎日のスキンケアと同じように、「やさしく触れて、自分の体を大切にする時間」として、取り入れてみてくださいね。
症状が強く日常生活に支障が出るような場合は、婦人科での「エストロゲン補充療法(HRT)」が有効な場合もあります。
膣や外陰部にエストロゲンを直接届ける膣錠・膣クリーム・膣リングなどの治療法があり、副作用も比較的少ないとされています。
※ただし、乳がんや血栓症の既往がある方には適さない場合もあるため、必ず医師に相談を。
「不快感=清潔にしなきゃ」と思って、石けんで何度も洗っていませんか?
実はこれが逆効果に。
膣や外陰部には本来、自浄作用(自分で清潔を保つ力)があります。洗いすぎると、必要な潤いまで奪ってしまい、かえって乾燥やかゆみの原因になります。
「こんなこと、誰にも言えない…」「歳のせいだから仕方ない…」と、不快感を一人で抱え込んでしまう方がとても多いのが現実です。
ですが、更年期や閉経後に萎縮性膣炎を経験する女性は、日本でも数百万人以上いるとされており、決してあなただけではありません。
そして、適切な対処をすれば、多くの場合は症状の改善が見込めます。
更年期以降の女性の健康を支えてくれるのが、「女性のライフステージを熟知した婦人科医」です。
違和感や不快感が続くときは、我慢せず相談できる場所を持つことが、何よりの安心につながります。
萎縮性膣炎は、炎症そのものは治っても、「不快感が残る」という悩みが長引きやすい症状です。
でも、それにはきちんと理由があり、対処法もあります。
「年齢のせいだから」と諦めず、
「こんなこと相談してもいいのかな?」と遠慮せず、
あなたの毎日が少しでも快適になるよう、できることから始めてみてくださいね。
私たち「fuwari」は、すべての女性が自分らしくいられるための正しい知識とやさしいケアを、これからも発信し続けていきます。